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Category: みんクエ
リコ初稿
ツバ太の義妹(腹違い)ですが、「ユキ兄さんの好みのタイプになるように」と、中の人にフラグ立てられました。
ので書いてみたんですが、ユキ兄さんではなく中の人である私の願望が表層に。レナ(FF5)好きだったんだ。
男3人
これもまだ描きこなれてないなあ。
ユキ兄さんの体格の方向性がこの頃まだつかめてなかったってのもありますが。
0023-03 (0047)
そもそもが。
「…有り得ないわよね」
全く同感だ。
「どうしてこの厳戒態勢というかやりすぎ態勢の状況で、通り魔を行うなんて気になるのかしら」
昨晩。通り魔はしっかりと現れていた。居合わせた数名の衛士達(中には雇われ者も含まれていたが)を無惨な姿に変え、まんまと逃げおおせたという。
「じゃーぼくらのすることはひとつだよね」
云うと、チャクはパンっと両掌を合わせた。
「…何の真似だ?」
「厄介事が振ってきません様に、神頼み」
無神論者じゃなかったのか、お前。そう口を挟もうとした時。
ごう、と。唐突に音が沸いて出た。
一斉に振り向く。と、そこには巻き上がる枯葉、そして──もう一つ、上り詰めたその物体は、街路を形作る石畳に鈍い音を響かせて頭から潰れた。ああ、昔、あんな蟾蜍を見た。そんなどうでもいい情景が頭に浮かぶ。
「純白樺の杖」
チャクがぽつりと声を響かせる。潰れて落ちたモノの先、ローブを纏った棒立ちの人間が、薄ら白く輝く杖を持っていた。それを持つ事を杖に許される為には、少なくともある程度の腕前が要求されるのだという。
そんな物は先の竜巻を見れば判る。あれだけ大きな突風を魔力の干渉を感じさせずに(そちら側の感覚が鈍い俺だけでなく、マリスもチャクも何も感じ取っていなかったのだから)作り上げる能力を持っているのが明らかなのだ、こちらの身構え方も変ろうというものだ。
「イーサ干渉を弱める膜を張ります」
マリスが云う。
「魔法使い相手じゃ、直接攻撃の方がいいかしら」
センリが踏み込みの態勢を取る。
「んじゃぼくはなんとかアレの気を逸らせてみるよ」
チャクが水晶を構える。
…となると、俺に出来るのはいつも通りの小細工というわけだ。
「あー、だいじょぶ? ユキヤくん」
まだ気分が悪い。
「びっくりしたなー。ぼくはああいうのもう楽しくて仕方ないんだけど、ユキヤくん全然駄目なんだねぇ。ちっちゃい頃なかった? 飛行願望みたいなの」
願望を持つのと、実際体が耐えられるかという現実とは、常に一致するとは限らないに決まってるだろうが。
憲兵が来るのを待つ間、魔術師であった塊を眺めながら、俺は石畳に座り込み無理矢理気分を落着かせようと努力していた。
やけに機械的な緩慢さ(例えるならば、紐で手足を吊られた操り人形だ)で杖を振り上げた男は、それでも詠唱の速度だけは直前に見せた魔力同様優れていたのか、俺達が行動を起こす前に小竜巻を作り上げていた。センリとマリスが風に煽られたが、二人とも自身の行動を止めることなく、センリは男に殴りかかり、マリスは魔術防御の膜を張った。そしてチャクが雷を喚び、それに紛れて俺が男に襲いかかろうとしたところで、唐突に足場が消えた。
いや、足場の方が消えたのじゃない。俺達が足場から離れたのだ。
男は熱気を纏った風を巻き起こし、俺達を中空へ打ち上げた。内臓から自身が持ち上げられる様な感覚を初めて味わい、そしてその異質さをはっきりと脳が認識する前に、今度は冷気の塊が体に衝撃を与えた。落下を受け身でなんとかやり過ごしてから、せめて一太刀浴びせようと奴の首筋をかっ切った所で──異様な吐き気に襲われた。膝を突いた自分に叱咤を飛ばそうとした時、杖の立てたカランという乾いた音が響き、そのすぐ後に、どさりという重さを耳にし──
思わず、安心して、吐いた。
「どっちかっていうと、持ち上がる時より落っこちる方がダメってひと多いけど、ユキヤくんは逆なのかな? それとも三半規管がああいう感覚全部に慣れてないのに突然また通常の重力用に引っ張り戻されちゃったっぽいからそれもでっかいのかもなぁ。いきなりあんなに動くんだもん、自殺行為っちゃ自殺行為だね。んね、具体的にはどんなだった?」
具合の悪い人間を前に長文を聞かせるな質問を投げかけるなとにかくお前は黙る事を憶えろ莫迦が。
他、思いつく限りの罵詈雑言を脳裏で展開させていたのだが(今考えればそれは十分気を紛らわせるという役目を果たしたのだが、精神衛生的には5割増でよろしくない)、チャクの服から逸らした目線の先、倒れている男の更に向こうに、俺と同じように肩で息を吐くセンリと、今漸く起きあがろうとしているマリスが見えた。
「あ、だいじょぶ。二人とも怪我結構あったけどそれは治したから。ただ体力の消耗は激しいっぽいけど、一晩寝れば治るんじゃないかな。てゆかさ、肉体的な部分ではユキヤくんが一番軽傷なんだけど、知ってる?」
…皮肉でもなんでもなく、これがこいつの素の感想だというのがいい加減判っているからこそ、云い返し辛い事この上ない。
0023-02
「買っちゃった! 見て! ねぇ見て!」
喜色満面という単語以外思いつかない様な表情で、チャクが詰所の雑魚寝部屋(今日も夜間勤務である以上、宿を取るのは面倒だと考えた。一応男女別だ)に駆け込んできた。そのまま、体を伸ばすために俺が使っていた一角に向かって来ると、ばふっと音を立てて座り込んだ。
「…お前、もう少し人の迷惑顧みろよ」
勿論、俺の云う“人”には、寝ていたところ騒がしさに起こされて憤慨していそうな辺りの連中だけでなく、そんな奴等の怨念籠もった目線を集める羽目に陥った俺自身も含まれる。
「まぁまぁまぁまぁ。ねぇほら。んね見てよ。凄いでしょコレ」
「なんだ…水晶か? 随分黒光りしてる玉だな」
「ん、水晶かどうかはわかんないけどね、これ呪われてんの! ついにぼくも呪われ仲間に入っちゃったよ!」
わぁいと、およそ直前の台詞と合わない声を上げて「もぉこれ呪われてるから面白い位意識のすり替えが起こっちゃったりして他の杖とかを魔術の媒介に出来無くなっちゃうんだよぼく。んもどんな原理なのか全然わからないけどだからそれが面白くって」延々と喋りまくるので、ここで俺がその玉を叩き割ろうと引っ掴んで投げたりしたらどうなるだろうという辺りを想像しかかったのだが、慌てて思考を戻した。というか、もう既にこの思考の流れ方自体、大分こいつに汚染されてきている様な気がしないでもない。
ちなみに“呪われ仲間”とは、俺・マリス・センリがそれぞれ、何某かの“呪われた装備品”をつけていた事による。俺は外套であったし、マリスは強力な魔力の籠められた短刀であり、センリは鎧であったりした。
「…まぁ、確かに色んな付加効果が有ったり、防御面やら攻撃面で優れてるのは実感してるが…そんなに呪われたかったのか、お前」
「だってダークプリーストだし。常時呪われてなくちゃ!」
もう訳が判らない。
とにかく廻りの迷惑になるから黙れとチャクに云い置いて、俺は詰所を出る事にした。あの視線の集まりっぷりに耐えられる程、俺の神経は図太過ぎやしなかったらしい。
0023-01 (0046)
そもそもが。
「…有り得ないわよね」
全く同感だ。
「外区で通り魔事件が多発。だから警備の人員を補充する。それはいいわよ。それにしたって、物には限度って物があるわよね。私が通り魔なら、絶対こんな時に人襲ったりしないわ」
センリの言がもっともなのは、昇ってきた朝日が証明した。今日という日は、まるで何事もなく始まったのだ。
ルアムザは同心円状の横路とその中点で交差し円を8等分する大通りとで出来ているわけだが、道をほんの一本隣に動いただけで俺達同様に見張りを行っている人間に鉢合わせる様なこの状況で、一体どんな通り魔が暴れるというんだろうか。
「ですけれど、犯罪の抑止にはなりますよね」
「根本的な所は見事にずれてるけどな」
「むつかしい事は偉い人が考えてくれるよ」
チャクがふわわと大あくびをひとつしてから、むにゃむにゃと呟いた。
「ぼくらは云われた事きちんとやったんだし、いいじゃん。早く寝よ。依頼って2日拘束でしょ? 今日の夜中もやるんでしょ? だったら早く体力戻さないとねだよ。ああ眠いねむい。おハダが荒れちゃうよ」
うんとこしょと口にしながら伸びをして「行かないの~?」詰め所へ戻ろうとするチャクに、俺達は肩を竦めて顔を見合わせた。全くもって奴の云う通りだ。無駄な事はせず、とっとと戻って今夜に備えるべきだろう。
0022-03 (0045)
「警邏がいいなぁ」
「理由は?」
「楽してお金かせげそう」
…ということで、都内の警邏を行うという依頼を受けた俺達は、宿をキャンセルして詰め所へと向かう事にした。因みに前述の“理由”を口にしたのは勿論チャクなのだが、全員が全員似た様な感想を持っていたので、誰も何も云わなかった。不謹慎であるのは百も承知だ。
警邏の時間は深夜から早朝に掛けて。荷物だけ置いて詰め所を出た。夕飯の為だ。
「そういえば」食事を終えてコーヒー(さすがに仕事前にアルコールを摂る趣味はない)を飲みながら、ふと思いついた事を口にしてみた。「お前の卵、一体いつになったら孵るんだろうな」
「ん~そうなんだよねぇ。ぼくとしては早くふかふわ~なのに出会いたいんだけど」
ねぇハクヒ、と、チャクは足下で青菜を頬張っていたウサギに話しかけた。
今現在、俺達のパーティで卵を持っているのは二人、チャクとセンリだ。センリの方は雅が居る関係上、出来れば動物に生まれて欲しくないという事でチャクとは対照的だ。勿論、その中身がアイテムな事もあるのだが、それは外側からはちっとも判らない。ちなみに、物理的に割るという事がどうやらこの卵は不可能らしい。とすると、やはり卵が開く(亜獣と限らない以上、孵るよりこちらのがいいだろう)のには、何らかの形でイーサが関係しているのかも知れない。例えば、持ち主の思考や何かに因る様な。動物が欲しけりゃ動物とか、アイテムが欲しけりゃアイテムとか。
とはいえ。
「…だとしたらどれだけ有難かったか」
「…? どうかされました?」
「いや。独り言」
浮かべた例は、見事に俺自身が破っているので(今でもアイテムの方が良かったと思っている)、全く信憑性のカケラもないのは明白だった。
「そういえばその卵、結構なレアアイテム扱いらしいな」
「え。そうなの?」
「市場でやたら高価取引されてるだろ。いっそのこと、お前それ売りに出した方がいいんじゃないか。そうしたら懐事情が一気に解決だ」
ええ~。ん~。でも、いや~、アレは~、んでも、違うよ~。訳の判らない声を上げながらやたら逡巡していたようだが、結局孵るのを待つ事にしたらしい。まったく気の長い事だ。
0022-02 (0044)
「んで、んで、んで、名前なににしたの?」
ルアムザへの道中、クラスチェンジの経過報告がてら雑談に興じていたのだが(変な事務員がいたとかなんとか)、突然チャクが食いついてきた。勿論、ウサギの名前の下りでだ。そんなに気になるか?
「はくひ」
「ハクヒ? また面白い名前だねぇ。なんか意味あるの?」
こいつに面白いと言われるのは心外だが、別に大した意味じゃない。さあさあさあと鼻のとがった事務員に命名を強要されながらコイツの毛の色をぼんやり眺めているうちに、実家の池で見た薄氷を思い出しただけの事だ。
「…で、“薄氷”と書いて、“はくひ”」
「ふーん。雅とおんなじで、東方の字なんだ。ん? ユキヤくんてそっちの人?」
「実家は」
チャクはへーほーとひとしきり(神経を逆撫でしそうな方向の)声を上げてから、んじゃあユキヤくんは今度はなにを育てられる人なの?と訊いてきた。
「いや、ウサギの使役方法は一通り判ったから、テイマーは辞めてきた」
「え? そうなの?」と、これはセンリ。「私てっきり、一通り上位までこなすのかと思っていたけど」
そもそもテイマーになったのはこのウサギ…いや、薄氷の扱いを覚える為で、別に他に何か使役したいという願望は全くないのだ。だったら、きちんと前衛として戻った方がいいだろう。そう思っただけの事だ。
「じゃあ、ユキヤさんは探索者ギルドに戻られたんですか?」
「いや、そのまま、戦士ギルドに寄ってきた」
「え?」
さすがに全員の顔が一斉に俺の方を向くというのは、あまり気分のいいものじゃない。
「あれ、だってユキヤくんて、力任せにどっかーんっていうの、あんまり好きじゃないんじゃなかった?」
そこはそれ程変わってない。ただ、一応俺はこのメンツの中では前衛だ。だったらそれに多少なりと沿った転職をした方がいいんじゃないかと思い、手っ取り早く筋力でも多少付けようかというだけの話だ。
戦士ギルドで転職傾向の一覧を眺めていたら、スカウトを終えてからなれる職に格闘術を使ったものがあった。それは、懐に潜り込んで戦うタイプである俺と方向性は合致している。
「というわけで、暫く目端がどうとかいう辺りでの期待には添えないと思う。だから悪いが、当分はそういう類の依頼とかは無理だ」
「まぁでも、それはルアムザの公社次第よね。ひょっとしたら、ユキヤが戻る前に私がスカウトになってるかもしれないし」
「…そうなのか?」
問うた俺に、センリはそろそろ上位クラスの残りが複合型ばかりになってきていて、さらに残りのうち2つがスカウトとの複合なのだと云った。そういえば探索者ギルドの上級職も、戦士との複合型が多いのだという。そういった相関的な部分が、どこかにあるのかもしれない。
のんびりと歩いていたら、ルアムザに着いたのはもう日暮れ前に差し掛かる時だった。公社へ行くのと宿を取るのとで、2手に別れた。
0022-01
「そういえば」
と、調教師ギルド出張所の人間に云われた。やけにとがった鼻の、単眼鏡を付けたひょろりとしたその男は、書類を見ながら続けた。
「シフォーラビットを飼ってらっしゃるとの事ですが、勿論その肩のディオーズですな?」
「ええ」
「名前の所に“未定”とありますが、未だに?」
「まあ」
「いけませんな」
男は、何故か俺ではなく肩のウサギにぬぬぬと顔を近づけた。…整髪剤でテカった髪が顔の側に寄るというのは、なかなか気分の宜しくないものなのだが。
「貴君は実のところ、仰る通りクラスチェンジが可能であるのですが」
「はあ」
「いや、いけませんな」
……なかなか疲れる事務員だな。
「それは俺が下位クラスをマスターするのに、こいつに名前をつけてやらんとまずいって事ですか」
「ム、それは偉大なる勘違いですな」
「…端的にお願いしたいんですが」
「そこなるウサギに、きちんとお名前を付けてやれば宜しい」
……いや、そこまで戻らなくていい。
「じゃあ逆に、付けないとどうにかなるんですか」
「なに、大した問題ではありません」
男は単眼鏡を外すと、胸元のハンカチーフ(どうして調教師ギルドの人間であるのにこの男はぴっちりとした燕尾服を着ているんだろう)でもってレンズを磨きながら、俺の肩を落とす発言をした。
「我がポリシィというやつですな」
……受付がこんな男だった事を恨む為には、その前に俺の運を呪うべきなのだろうか。
0021-02 (0043)
テヌテに戻った俺達は、早々にガレクシンへと向かっていた。路銀の乏しい二人が地道な集貨活動したいと申し出たのだ。…とはいえ。
「…ガレクシンで、短期間で稼げる物はごく僅かだった様な気がするんだが」
折良く通りがかった荷馬車の中で、俺達は互いに公社で受けた仕事のあれこれについて、情報交換を行った。結果、出た結論がコレだ。
「そうですね…。それでは、一度、ルアムザの方へ出ませんか? グローエスの中心ですし、これからの動きも取りやすいでしょう」
「ルアムザか~。あそこいいよね。風のニオイとか。ちょっと古臭い感じで」
膝の上に雅とウサギの二匹を乗せたチャクが、これ以上ないという様な幸せ顔の目尻をさらに下げた。
「古臭い?」
「そう。なんていうかなぁ、こう、ちょっと昔の図書館の中みたいな。落着いた感じの。ユキヤくんにはわかんない? あーぼく、ああいうところでのんびりおいし~い紅茶でも飲みながら思いっきり読書に耽りたいよ」
…そんな事しているから、金がいつまで経っても貯まらんのじゃないだろうか。
「そういえば、チャク、そんなローブ持ってたの? 初めて見るけど」
さすがに遅い時間にガレクシンに着いた為、ルアムザへ出発するのは明朝という事になった。そこで久しぶりの木賃宿に部屋を取り、金銭の乏しい二人に会わせて宿の定食で晩飯を摂る事になったのだが、そこに現れたチャクはセンリの云う様に、今までの淡い紫のローブではなく、上から下まで濃いグレーに取って代わっていたのだ。勿論、髪だけはいつもの通り薄い金だったが。
どうやら誰かに突っ込んで貰いたい所であったらしい。途端目を輝かせたチャクに、俺はああまた長くなるなとぼんやり思いながら、ウェイターにビールを頼んだ。
「あ、これ? ほらぼく、テヌテで一旦ギルド行ったじゃない? それでプリーストに転職したんだけど、んーと、ほらサマナーってクラスマスターするとさ、上級悪魔の召喚出来るでしょ、それぼくの夢のひとつだったんだけど、それはまぁ置いといて、プリーストっていうとこう、なんかすごくこう、正直者が莫迦を見るみたいな感じだけど、ん、ちょっと違うか、まあとにかく、ぼく無神論者だし、その上悪魔なんか喚んじゃうし、これはもうあれかな、ダークプリーストとか呼ばれちゃう方を目指そうかなーなんて」
…こいつの脳が突拍子ない方向なのはいい加減判ってはいたが、さすがに最後の一言だけにはツッコミを入れるべきだろうか。