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動じない彼ら、動じる彼

「あ!」の人作成。オールキャラ。 南の島、十一エンドエピローグ中の他メンバー。

 ちょっとした挨拶代わり。でなきゃ、そう、以心伝心ツールみたいな。非言語コミュニケーションつーか。
「便利だね」
「面倒くさくなくてね」
 十一が顔を前に戻し、俺も体を起こして、目の前に果てなく広がる海を眺めた。
 光が溢れてきて、大気と海の色が変わり始める。きっと後ろの方からか太陽が昇ってきているんだろう。
 風が暖かかった。

 ――― 一方その頃。
 民宿なだけに大騒ぎは控えたが、それでも夜更けまで飲み明かしたはずの連中は、何故か次々と目を覚ましていた。
「あ、あれ?…なんか、足りなくないっすか」
 鈍い頭痛のする頭を振って一伊が呟く。
 窓際に座って外を眺めていた二志は振り返らないままビールの缶を口に運んでいた。
「――んー?……あ、迎え酒じゃん!俺も俺も!」
 バリバリ腹を掻きながら辺りを見回し、太郎が声を上げる。
 それ以外に、狭い客室に人影はなかった。

「朝だー! あーたーっらしっいっあーさがきた!」
「ちょ、太郎さん声でかいっすよ!」
 ぬるいビールを飲み干すと畳にひっくり返って歌いだした太郎に一伊が慌てて止めに入る。時計はまだ5時を指していて、世間一般が目覚めるには早い時間だった。
 口を塞ぎにかかった一伊の腕を掴んで、太郎の表情が嬉々としたものに変わる。
「腕ひしぎ十字固めー!」
「な?え、あぃいたたたたたた!」
「……」
「ギ、ギブギブギブギ――ちょ、も……死……!」
 窓枠に頬杖をついて明後日の方を見ていた二志が顔を上げると、すっとふすまが開いて、玄が室内に入ってくる。
「あ、玄」
「その他二名はどうした」
「……ぅう」
 解放された肘を抱えて悶絶している一伊にちらりと玄の視線が流れる。
「……外で見た」
「えー?外で何してんの?おさんぽ?」
「……」
 顎を引いて考え込むような素振りを見せ、結局答えずに腰を下ろす。
「え、なに。体操?」
「……ちがう」
「徘徊」
「……(首を振る)」
「海水浴?」
「日の出観測」
 交互に回答する太郎と二志に、いずれも短く否定して、玄も残ったビールの缶に手を伸ばした。
「じゃなんだよー」
「青姦とか」
 太郎の声に続いた二志の呟きに、一瞬場が静まり返った。
「……え?なになに?」
「アオカン。一般に屋外の開放的な場所で行うセックスのことを指す」
 あまりにもあんまりな二志の言葉に、でも玄は淡々と首を振る。
「……そこまでではない」
「――ぅえ!?どーゆー意味!?」
「惜しかったか。じゃ抱擁」
「……(首を振る)」
「接吻」
「……(頷く)」
「せ…?なになに?」
「セップン。いわゆるキスのことを指す」
「へぇ………ぁあ!?」
 太郎の叫びに、一伊がむくりと体を起こした。
「あいつら、んな趣味あったん!?」
「……」
「確かか視力2.0」
「見た」
 今度ははっきりと肯定した玄に6個の目玉が集中する。
「えー!…えーーー!?」
 オーバーリアクションで驚き直す太郎、すっと目を細める二志、何考えてるかわからない玄、俯いたまま無言の一伊。
「マジで!?なんで!?いつから!?」
「知らない」
「……」
 一伊が小さく何か呟いたが誰も聞いていなかった。

 二志がゆっくりと唇を笑みの形にする。
「――和を乱す不純同性交友には……」
「罰ゲームだ!」
 太郎が身を乗り出した。玄も小さく頷く。
「どーすんの?絞め技かける?」
「いつもと変わらん。却下」
「じゃ、フェリーから落とす」
「殺すな」
 急に一伊が立ち上がった。その眼が据わっている。
「ろーにん?どーした」
「……埋めましょう」
「へ?」
「砂浜に?」
 訊ねた二志に頷いて見せる一伊の背から、なにやらどす黒いオーラが漂ってくる。
「深く深く!いっそ縦に!埋めましょう!埋めてやりましょう!」
「……悪くねぇな」
「あ、じゃあ俺穴掘る!」
「……掘る」
「よし行け肉体労働班」
「っしゃああ!」
 勢い良く飛び出す太郎の後に玄が付いていく。眩しい朝陽に照らされた窓の外に図体のでかい二人の姿が見えて、すぐに砂浜の方へと消えた。

 やがて、外をぷらぷらと民宿に戻ってくる二人の姿が見えた。コーヒーの空き缶を手に軽い足取りの大成と、その数歩後ろに咥え煙草の十一と。
 二志は窓から視線を外して立ち上がる。
「泣くな浪人」
「泣いてないっすよ!」
 仁王立ちのまま一伊は鼻を啜った。
「あいつらがいかがわしいのはいつものことだ」
「……そう……っす、ね……」
「解放感でいかがわしさに拍車がかかることもある」
「……そう……っす、かね……」
「試してみるか?」
 へ?という顔をした一伊の顎に二志の指が触れた。突然至近距離に顔を近づけられる。
「え、ぇ……え?」
 眼鏡ごしの伏せられた睫毛まではっきり判別できる距離。
「ぅ、――」
 眼を見開いたまま一伊は石になった。
「……若いな。浪人」
 淡々とした声を耳元に残して、手と顔が離れていく。同時に開きっぱなしだったふすまの向こうから大成が入ってきた。続いて十一が顔を覗かせる。
「――あれ?なんか足んなくね?」
「犬どもなら砂遊びに行った」
「んまぁ、朝っぱらから元気ねぇ」
「つか、腹減りなんだけど」
「朝飯には早ぇだろ。ツマミでも食っとけ」
 三人の会話が一伊の頭上を行き交う。
「ところでなんで浪人固まってんの」
「……ぇ、あ、ぅ」
「さあ。放っとけ?」
 大成の疑問は、二志によってあっさり流された。
 大成はスナック菓子を漁り始め、十一は布団の中に潜り込んで二度寝を決め込む。

 眼を輝かせて太郎が皆を呼びにくるまで、あと20分。

何だかんだ言っても彼らは全員モラル最下段というか、頭のネジが行方不明なので身近なホモにも引かなさそうです。普通どん引きよね。
浪人だけ普通にショック受けてたらいいと思います。
そしてこの後二人は本当に縦に埋められてしまえばいいと思います。エンディングだからって素でちゅーなんぞしやがって…!
 注ー。私は十一と大成はずっとただのいかがわしい仲良しであれと願っています。カップル成立とかなく。

結論。メンバーから大成と十一を抜くと、会話崩壊してしまいます。無理でした。たろを賢くするか二志を軽くするかしないと……。

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