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ないしょないしょ。

オールキャラ。くだらない日常的バカ話。

 二志の寝起きは、4:1=不機嫌:天然ボケくらいの確率なので。
 ふと気付くと、二志が一人、壁際のソファで寝ていたので。
 俺・十一・太郎・玄のいつもの4人は、いつもの賭けを開始した。
 ―――寝覚めの二志カップ、どっちの寝起きでショー。

「なー、こないだって、どんなんだったっけ?」
 太郎の云うこないだがいつだったかまでは覚えてないが、前回の結果は確か。
「婆ちゃんからの差し入れ持ってきた浪人が、ドア開けてすぐ灰皿蹴っ飛ばしてさ」
 キューを構えたまま、十一が拾って次いだ。
「あー、がっしゃーんって、すんげえ金属音響いてな」
「あれは凄かったね」
「ニセシンバルが鳴り響いたね」
「俺あれ聞いたとき、アタマん中でブルース・リーが決めポーズしたよ」
「ジャッキーもビルの上から落ちるわね」
 十一が、アチョウ、と声を上げながら手玉を打った。かん、かこん、こん、と気持ちの良い音がして、4番がポケットに入る。台の中を球が転がる音が響く。
 二志は、こういう音が続いている分には目を覚ましたりしない。逆に、起こさないように静かにしながら企みを続けている方が、違和感を感じて目が覚めるらしい。変な特技だ。
「……うめぼしだった」
「うめぼし?」
 玄がぽつり呟いたのに、反射で太郎が聞き返し、それからすぐ思い出したらしい。あーあーと声を上げた。
「そっだ。浪人思いっきりウメボシやられてたんだ。ちょー痛そーだったアレ」
「目が覚めて良かったんじゃね? 浪人だし」
 云って、十一が打った。が、手番の球には当たったものの落ちず。
「あっちゃ」
「ナイスアシスト」
 十一の、見事俺に効率の良い位置に手玉を置いてくれたショットに賞賛を浴びせる。
「言葉だけじゃいやよぅ。ちゃんと態度で示してちょうだい」
「この俺のあふれる愛情が届いてないだなんて、がっかりだよハニー」
「いやよいや、いやったらいやなの。落とさないで?」
「可愛いハニーの頼みでも、コレばっかりは無理な相談だぜ、と」
 手番の3番にカウンター当てて、ポケット手前の7番をイン。心の中で十一に感謝の意を表明しつつ、太郎にオススメ商品のアドバイスをした。
「たろもやって貰えば、二志うめぼし。頭冴えて卒検受かるかもよ?」
「いんだよ、俺は次で受かるっつーの!」
「…原付の積載制限は50kg?」
 勢いよく宣言した筈の太郎は、突如玄から出された問題にうぉう?と変な声上げて中空を見つめ、そして固まった。
「あの調子じゃ無理だな」
「多分年単位だね。…じゃあ、そろそろ寝ぼける方に500円」
 十一に相槌を打ってから、順当に3番を落とす。
 俺のベットに十一は一度二志を見て、それから口を開いた。
「そんじゃ、あたい“たろにキレる”に100円だわ」
「ぅえ? なんで俺!?
「たろ、積載制限覚えてねえもん」
「関係ねーし! んじゃあ十一は覚えてんのかよ、重さなんて」
「30kg」
「…正解」
「いえー」
 玄の判定に、俺が賑やかしの声援を送る。十一がどうもどうもと軽く手を挙げた。
「おっかしーって!」
 太郎が吼える。
「なんっで十一そんなん覚えてんだよ。カンニング?」
「しねえって。原付の積載、法定速度と一緒だし」
 おおなるほど、と思いながら手玉を付いた。5番にカウンター当てて6番…失敗。
「十一、昔っからそういうの得意よな。暗記系」
「一度コツ掴んで覚えれば早々忘れないだろ。…そういや大成全然ダメだよな」
「俺は一夜漬けの魔術師だからね」
 学生時代、十一はまんべんなく平均点前後を取り、俺はまんべんなく赤点前後をうろつきながら乗り切った。ただ俺は、時々1個2個追試の憂き目に遭ったけれど。
「なー、大成覚えてた? 原付の乗っける重さ」
 俺以上に赤点追試の魔の手に引っかかった太郎に問われ、さらりと答えて返す。
「勿論忘れてましたよ?」
「きったね。なのに受かってんの?」
「受かっちゃえばこっちのモンだから。そこがたろと俺の差」
「納得いかねー!」
 うぎぎぎぎと喉の奥で声を鳴らした太郎は、玄に襲いかかっていった。何か技を掛ける気らしい。
「玄、どっち?」
「―――」
 知らぬ間に5・6番とポケットに入れていた十一が、二志と玄とを交互に指さした。賭けの話に戻したらしい。
 襲い迫るクマ、もとい太郎をいなしながら、少し考える素振りを見せた玄は。
「…ラピュタ」
「ぶはっ」
 その答えに、脳裏に記憶が川を上る鮭の勢いでやってきて、思わず吹いた。
「玄、おま、あんとき起きてたん?」
「―――(頷く)」
「何? ラピュタ? ジブリの?」
「映画のやつ?」
 十一と、そして当事者の一人だった太郎に問われ、俺は二志の最強伝説を披露することにした。
「あー、ワゴンの旅の時ね、すげ最初の頃かな。俺が助手席で、たろと二志が2列目で―――」
 云いながら、これからキャメルクラッチ極めようとしていた太郎の袖を掴んで俺の横に並ばせた。太郎の左手を取って、自分の右手とで恋人繋ぎにする。
「二人が寝てる間に、二志とたろの手をこーやって仕込んどいたわけ」
「ん、ぅお? そんなん、あったっけ?」
「や、まぁ別に覚えてないならそれはそれで。んで先に二志が起きたんよ。俺としてはそこで手ぇ見て“なんじゃこりゃあ!”っていう松田勇作を期待してたんだけど、二志先生ってば」
「―――バルス」
「ぐふっ」「ほっ」
 俺の語尾に被せる様に、二志の再現で玄が呟き、十一と太郎は妙な空気を口内に逆流させた。
「す、っげー! わかんね。にっしーがわかんねえ!」
「ぎゃはは。笑える。ダメだ、止まんねえ。その連想がすげえ。発想力ハンパねえ」
「るるるーるるーるーるー」
「その野太い君を乗せてやめて。そんな少年合唱団いないし」
「―――杉並児童合唱団だ」
 その声に、動きも身体も固まった。十一と太郎も俺と同じで、ただ玄だけが「おはよう」と、目覚めた二志に声を掛けた。
「おはよう。で、俺の何がわからねぇって?」
 地の底から響く声に、わからねえ的な発言をした筈の太郎に顔を向ける。“とりあえず太郎の所為にしよう組”に入るつもりか、十一も俺に倣った。
 ひとり、顔も身体も二志の正面になっている太郎が、不穏な空気に戸惑いながら口を開いた。
「ん、え、っと、だから、にっしーよく覚えてんね?」
「何を」
「ラピュタ? っていうか、バルス」
「基本だろ」
 基本かよ!と、二志に顔が向いてないのを良いことに、俺と十一は口だけでツッコミを入れた。
「…かきくけこ」
「そこは応用だな」
 玄が呟いて、さらりと二志が答えた。もう常人にはネタすら判らないところまで行かないと応用じゃないらしい。つか、かきくけこって何。
 ちらりと目で見ると、詳しいな、と二志が呟いて、玄が頷いていた。珍しい組み合わせで、更にリリカルに通じ合ってる。何か危険だ。
「忘れてた」
 唐突に、玄がそう零した。
「ん、なに?」
 太郎が答える。どうやらこっち3人に用が有るらしい。一度横の十一と目を合わせてから、俺達も玄に向いた。
「…どうぞ?」
「賭けてない。…600円?」
「ばっ、しー!」
 ネタだけ云って、当たってたのに賭け金を忘れてたから俺と十一の分だけ取り敢えずくれとか云いたいらしいが、今そんなことを口にされたら。
「…ほう?」
 遅かった。

 結局、二志に脅されて根掘り葉掘り答えることになった。
 恐喝だわよ!と叫んだ十一はこめかみに二志ウメボシスペシャル(太郎命名)を喰らって悶絶し、太郎には罰ゲームコミで卒検対策勉強会が開かれることになり(多分太郎は死ぬ)、俺は眼光だけで諦めて土下座して平謝りし、そこに運悪く息抜き(本人談)にやってきた浪人は「受験生としての態度がなってねぇ」と八つ当たり的な説教を喰らう羽目になった。
 ―――そしてそれらから見事に免れた玄を見て、十一と二人、ラピュタ鑑賞会を開こうかなんて、ちょっと真剣に考えた。

玄に「君を乗せて」歌わせたかっただけですが何か(笑)。
推定ラピュタスキーにっしーに敬意を表して、サントラ掛けながら書きましたよ!(笑)。

一伊が出てこないのは、「受付に座ってることすら珍しい」ので有れば、勉強しないとならない浪人が2階にくる確率って更に低いんじゃないかと思ったからであり。
ていうか、多分浪人が連中と長いこと遊んだ(っていうのもおかしいけど)のって、あのワゴンの旅が初めてなのかもなーと思ったり。完全に不意打ちで巻き込まれただけだし。

ところでええと、「バルス」での太郎と二志、本当は二志が運転席裏(そして十一にツボ攻撃)の筈ですが、自分逆にもう書いちゃったので、途中で場所移動したんだよ!と思いこむことにしまんた。とりあえずそういうことでひとつ…

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