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データベース:是空

是空

Ask,and it shall be given you;
seek,and ye shall find;
knock,and it shall be
opened unto you.

1:プロジェクト扶起//p/zecoo database
 忘れっぽい兄さんたちのために、要点を整理しておくね。
 プロジェクト扶起は、双子を安全に覚醒させて、正しく鳴力に導くためのものなんだ。扶起っていうのは、目覚めるって意味なんだ。最初、俺がこの名前を思いついたとき、兄さんたちは反対したけれど、馴れてくるといい名前に思えるだろ?
 鳴力については鳴力という項目を見て欲しいんだけど、双子同士が呼び合う特殊な力のことさ。問題なのは、鳴力に覚醒し始めた双子は、とても不安定な状態が続くということ。完全な鳴力に覚醒してしまえば平気なんだけれど、それまでに邪気に憑かれないとも限らないからね。是空では、そうした双子が見つかると、ゆっりと、安全に覚醒できるように、いろいろと指導しているんだ。それがプロジェクト扶起さ。
 鳴力に覚醒し始めたばかりの、不安定な双子に注意が必要なのは、邪気に憑かれやすいってだけじゃないよね。兄さんたちはスネークの企みについて、表だって話したがらないけれど、やっぱり鳴力の横取りを防ぐのが、プロジェクトの目的だよね。なんたって、やつらは、双子たちの鳴力を集めて、不老不死の奇跡とやらを起こそうとしているんだろ?
 でも、やつらが双子たちを無理矢理覚醒させて、引き出しているのは、本物の鳴力じゃないんだ。まがい物の力、スネークに管理された力…それを是空では假鳴と呼んでいる。仮初めの鳴力って意味なんだよ。
 鳴力と假鳴、よくこんがらがるんだよ。
 最近じゃ、プロジェクト扶起を発動するような双子は、もうほとんどいなくなったって聞いたけど、本当なの? 本当だったら、スネークの動きそのものを封じなければならなくなるよ…でも、どうやって?



紅頭5号 記
2:鳴力//m/zecoo database
 そそっかしい兄さんたちのために、まとめておくよ。
 鳴力についてだよね。鳴力とは、離ればなれになった双子が、お互いに呼び合う特殊な力のことだよ。離ればなれって…そうさ、産まれてすぐに、双子たちは陽界と陰界、2つの世界に離されるんだ。…正直言って、あんまり認めたくはないんだけど、この世界は陰界って呼ばれている。だから、もう一つの世界は陽界ってことになるんだけどね。
 そういえば、逆もあるって、誰かが言ってたな。陽界で生まれた双子のうち、ひとりをこの陰界につれてくるようなこと…
 そんなケースでも、鳴力は起きるんだろうね。とにかく、鳴力とは双子が呼び合う力のことさ。
 そもそも、双子にはテレパシーみたいな力が潜んでいるって言われていたんだ。例えば、離れたところに暮らす双子が、同じ日に同じような体験をするなんてことは、よく知られている。まるで、申し合わせたかのようにね。同じ名字の人を好きになったりとか、体の同じ部分にやけどを負ったりとか、そんなこともあるんだ。
 双子が共に体験する出来事の間には、なにも因果関係なんてないのに、出来事同士はつながっているように思えるんだ。偶然にしてはできすぎているよね。だから、特別に、共時性なんて呼ぶこともあるみたいだよ。シンクロニシティなんて、しゃれた言い方もあるみたいだけど。
 陰界の九龍で、双子が騒がれ始めたのって、いつからだろうね。誰かが双子の力に気がついて、それをもっと強めるためにはどうすればいいか、いろいろと研究したらしい。それが、結局は鳴力という力の発見につながって…そこまではよかったんだけど、スネークのやつらが邪な目的のために、鳴力に目を付けてから、やっかいな状況になったんだ。
 ただ、スネークに管理されている鳴力は、本物じゃない。それを假鳴、つまり、仮の鳴力って意味でそう呼んでいるんだけど、假鳴をいくら高いレベルに引きあげても、双子同士が感応することはないんだ。一方的に、力を吸い取られて、それでおしまいさ。本物の鳴力の状態になれば、誰も手出しをすることはできない。その力は、双子たちだけのものになるんだ。
 でも、残念なことに、この九龍で、本物の鳴力にまで至った双子は、まだいないんだ。もっとも、そんなやつがいたら、スネークは慌てふためいて、力を横取りしようとするだろうね。無駄なことなんだけどね。



紅頭5号 記
3:双子政策//t/zecoo database
 この項目は、ちょっとやばいから、控えめにさせてもらうよ。兄さんたちも、あまり話題にしたがらないもの。
 さて、双子政策だけど、これは蛇老講、通称オールド・スネークが進めている計画なんだ。双子同士が呼び合う力、鳴力を集めて、それで眠れる龍を目覚めさせて、不老不死の奇跡を起こそうって算段なんだよ。
 不老不死の奇跡が起きれば、永遠の命がもたらされるって言うんだ。なんだか、インチキ臭いね。そもそも、眠れる龍なんて、誰も見たことないんだよ。だけど、スネークの連中は信じきっている。
 街の人たちも、そりゃ不老不死の命って言われりゃ、つい信じたくなるよね。少なくとも、協力のひとつくらい、するかも知れないし。
 スネークの宣伝では、鳴力を集め続けると、最終的には老力と呼ばれる大きな力が生まれて、眠れる龍が目覚めるらしい。今の段階じゃ、まだ老力にはほど遠いから、スネークは必死になって鳴力のレベルを引きあげようとしているんだ。
 それと、とにかく双子の数を増やすことにも重点が置かれていて、そのための施設もあるよね。双子中心では、なにやら怪しげな方法で、きっと遺伝子操作とか、あるいは何か呪術的なほうほうで双子を作っている。
 双子政策が始まった当初は、こうして作られた双子のことを普通の双子と区別して、特別に新童と呼んでいたけれど、今じゃみんな新童だから、もうこの呼び名は使わなくなったんだ。
 そうそう、忘れちゃいけないのが、双子たちの鳴力、いや性格には鳴力もどきだけれど、それをどうやって集めているかだね。
 スネークに力を貸している双子たちは、みんな自分の家に家庭用のクーロネット端末を持っていて、生体通信を介して力を送るんだ。双子中心のどこかに送られてきた力を集める場所があって、そこから眠れる龍に送り込んでいるらしい。このへんの詳しい話は、まだ確認されていないよね。
 なにしろ、スネークたちのガードが厚くて、なかなか調査できないんだ。



紅頭5号 記
4:妄人//w/zecoo database
 妄人が本当に不幸な存在なのかどうかについては、兄さんたちとずいぶん議論したよね。そう簡単に答なんて出ないだろうけど、街の人たちはみんな、心の中で妄人になっちゃたまらないと、びくびくしているのは確かだよね。
 妄人は、なんて言えばいいんだろう、半分が物になってしまった人間なんだ。そうとしか言いようがないよ。じゃあ、なんで妄人なんて名前なのかって言うと、妄人になったら、自分はもう人間ではなく物なんだって思い続けなきゃならなくなるんだ。妄想するんだよ。それが途絶えると、あっと言う間に物になってしまう。完全にね。
 つまり、妄想を続けていることが、半分は人間だっていう証なわけさ。妄人が妄想する内容は、なにも自分が姿を変えられた物についてだけじゃなくていいみたいだけど、妄想を切らしたらそれでおしまいってことなんだ。妄想する人、それで妄人さ。
 妄人の中には、人間だった頃から妄想するのが好きだった連中も多いんだ。
 誰だって、一度や二度は経験あるよね。
 ほら、飛行機の真似をして、両手を翼に見立てて旋回するポーズをとったりさ、そういうこと。でも、妄想好きの妄人たちの多くは、そんな単純な内容じゃ喜ばない。飛行機なんて誰でも思いつくけどさ、そうだなあ、自分のことを磁石だと思うようになったり、鍵穴になろうとしたり、なにしろユニークなんだ。
 そう言う妄想の持ち主は、ちょっとしたことですぐに妄人になってしまう。
 妄人になるケースって、たいがいが邪気に触れたときなんだよ。邪気が妄想を膨らませて、やがて人間の姿を変えてしまう。
 こういう人は、無理矢理に妄人にされたわけじゃないので、不幸というのとはちょっと違う気がするんだ。そこのところが、兄さんたちと意見が合わないんだよね。
 びくびくした人間でいるより、よっぽどましなんじゃないかって思うんだけどなあ。ただ、最近は一度も妄想なんてしたことないのに、妄人になってしまう人もいるようだしね、あまり呑気なことも言ってられなくなりそうだよ。
 あっそうだ、妄人には特別に妄人だけが住む世界があるんだ。そこにいると、妄人たちは妄想を枯らすことなく、暮らしていけるんだって。



紅頭5号 記

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