Entry

0005-02

「あれ、ひょっとして、今日最終試験なんじゃないの?」
 朝食を摂ってから部屋に戻る道すがら、やおらチャクが口にした。
「チャクは今日4つ目なんだろ」
「そうだね」
「俺とチャクは、俺の方が1つ先だろ」
「そうだね」
「じゃあ確認するまでもなく、そうなんじゃないか?」
「ん~、ひょっとしたら1日くらいのんびりするかも、とかね」
 お前じゃあるまいし、と、口の中だけで云う。
 まぁそれはひとまずさておいてね。チャクは云いながら、さておくジェスチャーを交えた。それを横目で見ながら、宿泊部屋の扉を開ける。
「んでさ、パーティの件は結局どう?」
 部屋の中は、カーテンを開け忘れていたので薄暗かった。窓際に行って、勢いよくカーテンを開ける。気持ちのいい陽射しが、部屋中に染み渡る。
「そう聞くって事は、そっちからみて俺は特に問題無いわけだ」
「ん。特には無いかなぁ。そうだねぇ、寝相が面白かったよ」
 …なんだって?
「寝相?」
「そう、寝相。キミってさ、ベッドを対角線に使って、それで両足だけ必ず上掛けから出してるの。多分夜中とか、眠りが深い時だけそうなんじゃないかな? 朝見たら元に戻ってるんだよ」
 あれ、知らなかったんだ? それじゃあぼくは良い事を教えたかもしれないねぇ。
 チャクはそういってにこにこと笑い、俺はといえば半ば呆然と自分のベッドを見ていた。…確かにシーツの寄り方が、若干、斜めになっている様な気もしないでもない。
「ねぇねぇ、それでぼくの質問は結局どうなったのかな」
「え、ああ、そうか。…いや、俺もまぁ、特には」
「そう。良かった。じゃあ講座が終わったら、よろしくね」
 差し出された手を握り返しながら、今後の道行きを思う。
 …少なくとも、新たな発見に困る事は無さそうだ。

Pagination

Trackback

  • トラックバックはまだありません。

Trackback URL

/trackback/585

Comment

  • コメントはまだありません。

Post Your Comment

  • コメントを入力してください。
登録フォーム
Name
Mail
URL
Comment
閲覧制限
投稿キー(スパム対策に、投稿キー を半角で入力してください。)

Utility

Calendar

04 2024.05 06
SMTWTFS
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

Tag Crouds