0015-04 (0031)
「ああ、お前に丁度良さそうなのがあるな」
「ん、ホント?」
夕闇の濃くなってきたガレクシンは街の廻りを囲む山々の表情が昼間とは一変し、鋭い牙を剥いた様にも見える。
ガレクシンは天然の要塞を持つ都だった。専有面積も五王朝随一を誇るこの国は軍事面においても抽んでている。なんでも通常の士団の他、最新鋭の機甲技術を用いた“銃士団”という物を備えているのだそうだ。
とはいえそんな事態が気に掛かる様になるのは五王朝間(或いは隣国)で戦が起きた時くらいの物であり、もっぱら俺達にとっては、こうして公社で日々の糧の為の第一歩を踏み出す事こそが肝心なわけだが。
「……どの辺がちょうどいいの?」
「悪魔だ呪いだに興味を持ってる様だから、てっきりそっち側もお前の範疇かと」
「……あのさぁユキヤくん。ひょっとしてひょっとすると、ぼくに死体愛好の気があるんじゃとかまで思っちゃってない?」
チャクはむぅと唸って俺を睨んだ。俺の差し出した依頼メモには《屍鬼討伐・動く死体の掃討》と書かれていたのだ。
まぁさすがにそこまで思っちゃいないがと前置きして、それで死体関係はどうなんだと訊ねると、あんまりね~と、さほど興味を覚えていない様な声。一体悪魔だなんだとどの辺がどう違うんだ? すると一言。
「だってほら、蛆とか湧くし、死体って」
結局蟲絡みだけなのか。お前の興味を削ぐ要因は。
晩飯を摂り、一風呂浴びて部屋に戻ってくると、ウサギはしっかり俺の布団の上を陣取っていた。せっかく作りかけていた囲い紛いに持っていこうかと思ったのだが、眠気と疲れの方がそれに勝った。
仕方ないのでころころ脇に転がしてシーツに潜り込む。すると暫くして、(多分転がされて起きたのだろう)ウサギはもぞもぞと懐に入ってきた。くすぐったい。億劫だったので、片目を薄く開け、尻が俺の顔を向いていない事だけ確認してから、再度目を瞑った。