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Tag: 斡旋公社

0009-01 (0018)

「おかしいって!」
 今日見つけた小鬼は、昨日と同じく4体。それを昨日よりも早いスピードで伸す事が出来た。が、その前後は昨日と同様の事態であった。つまり。
「なんでぼくばっかり狙われるの~!?」
 ありえない、とぶつぶつ云うチャクに、一応心の隅で謝ってから、取得物の検分を始める。
 今日の獲物になりそうなのはゴブリンの持っていた両手剣(昨日の物とは形が少し違う)と、それと一緒に腰に差していた木材。どうやらなんとかいう多少著名な木を切り出した物の様だった(昨日公社で、この木材の様に「原材料」として売れそうな物の一覧を貰ってきていた。でなけりゃ素人には全く判らない)。
「まぁ、あれだ」
 そろそろ何も云わずにいるというわけにも行かないだろう。適当な理由を見繕った。
「そのひらひらしたローブが、俺のより目立っただけじゃないか?」
「そりゃ、ユキヤくんみたいな黒でぴっちりしたのよりは、ちょっとくらい目立つと思うけどさあ~…」
「それで十分なんだろう」
 足を使うタイプである(俺の様な)戦法の奴に、チャクの様な服装は(当然ながら)合わない。足でも絡めて自ら転けるのがオチだ。一方のチャクは、締め付けを出来る限り失くしたタイプの、緩やかなローブを纏っている(魔術師系メイジにはこの手合いが多い)。しかも色は淡い紫。この森の中では目立つなと云う方が間違っている。
 勿論、俺の所作がもたらしている事実については、全く目を瞑った状態での感想だが。

0008-02 (0017)

「ん~、小鬼狩りでいいよね」
「そうだな、小鬼狩りで」

 結果の報告がてら寄った公社でもう一度同じ依頼を引き受けた。出立は前回(というか今日)と同じく、翌日の朝イチ。チャクは「今度こそ的にならない」と意気込んでいるが、口を噤ませてもらった。
「どうするんだ、その爪とかなんとかは、市場に流しに行くのか」
「ん、そのうちね。出品者よりはまず、落札者になりたいかなあ。まだぼく、ちゃんとした装備買ってないし。商店でも巡ってこようかと思うよ。ユキヤくんはどうする?」
「防具を見に市場に行く。暫くはあの革鎧でなんとかなるだろうが、魔法を使う様な相手だと心許なそうだ」
「あ~、最終試験とかね~」
 ぶらぶらと周囲の店を見て回った後、入札棟でひとまずチャクと別れた。商店で物を買うよりは、市場の中古品でも狙った方が(勿論時間は掛かる。何せ最長10時間だ)俺の懐具合には良さそうだ。

0008-01 (0016)

 居たね。居たな。
 チャクと目線でやりとりをしてから、眼前の小鬼を再び注視する。茂みの奥、多分食事でもしているのだろう。数は4匹。
 もう一度、チャクに目をやる。チャクもそれに気付いてこちらを向く。
 軽く頷き合うと、一斉に躍りかかった。

 テュパン近郊の谷だ。そこには何故か、小鬼ゴブリンが頻繁に出没する。勿論、これも《虹色の夜》以降の事だった。
 さしたる実害が無ければいいが、商隊の行き交う様な場所の事、何も起こらないに越した事はない。とはいえ、その頻繁に出没する理由(例えば巣が有るとか繁殖が早いとかなんでも)が特定出来ない以上、手頃な冒険者を小鬼の出没並の頻度で騎士団が雇い、これを逐次駆逐しているという。小鬼であれば、駆け出し冒険者(勿論俺やチャクを含む)にとって格好の腕試し相手だ。依頼を受ける人間にも事欠かず、駆け出しがメインの対象で有る以上、報酬も安く済む。成程一石二鳥だろう。

「あ~、つかれた~」
 事が落ち着いた途端、チャクはへたっと地面に腰を下ろした。辺りには焦げた草木と、小鬼の死骸。
「んも酷いよね。なんでぼくばっかり狙うわけ? おかしくない?」
 戦利品を捜していると、チャクがぶつくさ云うのが耳に入った。
 確かに、チャクの云う通りだった。斬りかかった俺達に対し、小鬼は一斉にチャクに向かって攻撃していったのだ。
「いったいいたいいたいたい! どいてってば!」
 小鬼の内の一匹(丁度チャクの真正面にいた)が、チャクに与えたダメージに満足したか踏み止まった所で、俺はその足を引っ掴んで地面に押し潰した。すると辺りに熱気が立ちこめた。慌ててチャクから距離を取る。炎の精霊にでも助力を頼んだのか、小鬼の内の2匹はそれで息絶えた。
「ってまたこっちに来るし!?」
 その炎を驚異と思ったのか否か、残りの二匹が再度チャクにかかっていった。一匹は俺が横から斬りつけて、もう一匹はチャクが(一匹を振り払ってから)魔法で餌食にして、そこでやっと終結した。
「おかしいよ。ユキヤくん一発も喰らってないし。っていうかぼくが前衛っぽくなってるのがそもそもおかしいし。魔法使いだよぼく? 普通は後衛からばしばし魔法飛ばすだけじゃないの?」
 使えそうなのは剣が一振りと、奴等の纏っていた硬革の鎧と…
「んね、ちょっと聞いてる?」
「聞こえてる。なぁ確かゴブリンの爪とかは市場で売れるんだったな」
「ん? ああ、そうだね、なんか物作ったりする人が使えるとかって」
「じゃあそれなりに形の良い奴を何個か選ぶか」

 テュパンに着いてから物品の分配をした。武器は(平和的に)ジャンケンの結果チャクに、鎧は俺が貰って残りはチャクに。
 取り敢えず、チャクの打たれ強さは解った。これなら問題ない。
 チャクが延々と小鬼の打撃の的になっていたのには、俺が常に奴等の射程外或いは視覚範囲外に存在する様に務めていたことも多分に占めているのだろうとは思う。思うが、ひとまず当面のところ、俺の練習に付き合って貰おう。

0007-03 (0015)

 公社は元々、冒険者組合がまだ『組合』としての確固たる基盤を形作る前、つまり冒険者同士がただよりあって集まっていた頃に相互扶助を目的として作られた『冒険者ギルド』だったそうだ。その頃は“まあ何とかやれている”という程度のものであった様だが、あの《虹色の夜》が起きた。
 以後発生した様々な異変に対して柔軟に(というか勝手に)対応していく冒険者達に目を付けたのは、自警を前提とした金持ちではなく、そこをすっとばしてグローエス五王朝――つまり政府だった。多額の出資を行い各種手続きの制度化を実施、そして現在に至る、とのことだ。
「結構立派な建物だよね」
 赤煉瓦を見上げてチャクが云う。二階建ての重厚な建物は壁一面の赤煉瓦だ。海風によって風化し随分と歴史を感じさせる風合を醸し出していが、公社の成り立ちを考えるに、どちらかといえば新進の企業に当たるんだろう。
 掲示板は、一面“これが全て依頼なのか”という位に要件やら報酬が書かれた紙に埋め尽くされ、元の地の色(多分緑)が全く判別の着かない様相だった。依頼があるところに冒険者が居り、冒険者居るところ依頼有り――確かにテュパンは、交易が盛んな事から人の流れも激しい為、冒険者も情報を求めて良く現れるんだろうが――さすがに、有りすぎじゃないか。
「そこそこのディオーズ狩りディオーズ狩り……ん、有った。有ったよ~。コレどう?」
 チャクの持ってきた紙には、<小鬼狩り>と大きく書かれていた。依頼元はテュパンの騎士団。近くの谷で、鬼種に対する討伐隊が逐次派遣されているのだとか。恐らく頭数合わせ程度のものだろう。
「いいんじゃないか。じゃあ申し込んでくる」
「よろしく~」

 帰り道、食堂に寄って晩飯を取った。しかし、テュパンの魚料理は全くどうして旨い。今まで刺身以外の魚料理(特に白身物)はあまり好んで食べてなかったが、これは宗旨替えするべきか。

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