0012-02 (0024)
「まだ昨日のモルド狩りが残ってるな」
掲示板に貼り付けられているメモを取ろうとした俺の腕を、チャクがはっしと止めた。
「…なんだ」
「その“モルド”ってなに?」
成程、昨日の蚊で懲りたのか。
メモを取って、内容に目をやる。これには勿論、あまり詳細な情報までは書かれていないが。
「このメモ書きを信じるなら、“テュパン東で数を増やしつつある化物”らしいな。虫の類かはどうかまでは判らない。──ん、これ討伐隊ってことは、集団行動か? 依頼主も五王朝の士団なのか。…面倒そうだな」
「んんんん~」
長考に入ったらしいチャクに、確認を取る。
「どうする? どうやら集団行動らしいから、お前いつものように好き勝手は出来なさそうだが」
「ひどいなぁ~。ぼくだってやんなきゃなんないときくらいちゃんとするよ。…でもねぇ」
どうやらよほど蚊の悪夢は奴にとって厳しかったらしい。少し、助け船を出すか。
「昨日の蚊の様に簡単に形状を分類出来るのなら、“化物”とは書かないんじゃないか」
俺の勝手な推測だが。付け加えた言葉を聞いていたのか否か、チャクはぱあっと喜色を浮かべた。
「そぉうだよね! ん! ユキヤくんいいこと云うなぁ! じゃあぼく申し込んじゃってこようかなっ」
俺の手からメモを奪って、受付へと勝手に向かうチャク。現金な。
例えば、化物の脚だけが節足動物のそれだとか、小さいサイズで群れて現れるとかってこともあり得ない話じゃないだろうが、いちいち水を差す必要もないだろう。せっかく乗り気になったんだ。利用させて貰った方がいい。
……奴と付き合い初めてからこっち、段々腹黒くなってないか、俺。