0009-02
テュパンに戻ってきてからも、チャクは時折「納得いかないよな~」と呟いていたが、ふと「そういえばそろそろ上位になれないかな」と漏らした。
「一応調べてみて、それでなれそうだったら、養成所行かない?」
「そうだな。じゃあ…」待ち合わせの場所と時間を決めようとして、魔術師ギルドの位置や、時間的にどの位掛かるのかという事を把握してない事に気付いた。「別にいいか、適当に宿で。遅くとも晩飯前までには戻れるだろう」
時間が早ければ、そのまま養成所に行こう。俺の言葉に、チャクは首肯した。
「ん。それじゃ~ぼくあっちだから」
「おめでとうございます。クラスレベルアップですね」
窓口の女性ににこやかにそう告げられ、逆に俺は眉根を若干寄せた。
ギルドに“準備”されているクラスは数多い。基本的な4ギルドに限っても、下位・中位・上位合わせて1ギルドに1+4+8=13クラス、つまり全部で52クラス。これだけでも数多いと思えるのに、その上商人ギルドはあるし鍛冶師ギルドはあるし調教師ギルドもある。果ては、ギルドと関係ない特殊クラスなんてのも有るらしい。そこまで考えるとやってられん度も一塩だ。
となると、トントン拍子にクラスが上がらないと、色々なクラスに挑戦出来ない。それは判る。判るのだが、「そのクラスで学んだ事が本当に身についているのか」という実感は、その速度と反比例して薄くなる。
魔術師ギルドや預言者ギルド(端的に言うとメイジとクレリック)達であれば、その実感は多分、自身が扱える魔術なり神蹟が増えていく事なのだろうと思う。しかし俺達の様な肉弾戦系の場合、自身で掴んだイメージこそが技に繋がるから、基本、その種別に大した差違はない。確かに、手段としての手数はそれなりに増えてはいるが。
ともあれ、新規クラス登録を無事に済ませ、講習を受けた。上位クラスは“ニンジャマスター”。……今までのクラスとの違いが、見事なまでによく判らない。下手したら「(一応)上位になった」という意識だけの差違なんじゃないだろうか。
宿に戻る途中で、入札していた商品が無事競り落とせていたので受け取って行った。炎の魔法により耐性のあるらしいローブ。まぁ炎の魔法はむしろ向こうへ掛けて貰いたい魔法だが、それでもゴブリンから拾った鎧よりは魔法耐性に優れるだろう。
試験を受けてから3日(そう、色々有った気もするが、まだ3日しか経っていない)。あれから、俺は少しでも成長出来ているのだろうか。少なくとも、クラスはムダにひとつ上がったが。