0009-03 (0019)
「あの人は、あの白い上衣で自己調節でもしてるのか」
テュパンで夜食用に保存食紛いの物を買ってから出立、途中それを歩き食いなどしながら、日付が変わる前に無事養成所に着いた。そのまま受付で最終試験の申し込みをしたのだが、やはりそこで見たメイアは“良く云えば落ち着いた”雰囲気を醸す女性であり、肌をヒリつかせる様な気配を纏う風には微塵も感じられなかった。喋りも見事に吃っていたし。
「それとも、あの受付に座ってるとああなるのか。講師を捜して走り回っている時には、今の彼女と同じだったしな。とするとわざとカモフラージュでもしてるのか?」
「んまぁ、別にそれはどうでもいいじゃん」走る俺の思考を、チャクがあっさりと断ち切った。「それより、明日誰を選ぶ?」
チャクはパラディンを選び、合格していた。対空技が効いたのと、やはり一撃で潰される耐久力じゃなかった事が勝因だろう。
「ユキヤくんは魔術師を選んだんだよね。じゃあいっそ、全然別の人にしてみる?」
「ムダだろうな。残りは力押しと、トラップを張るタイプの人間だ。前者じゃどこまでダメージを入れられるか判らないし、後者は相手が浮いている以上全く意味がない。俺もパラディンとウィザードの2択までは行ったんだが、そこで打たれ強さを考えなかった」
「ん~、ユキヤくん自体こう、攻撃は最大の防御って考えるところあるでしょう。だからじゃない?」
「…かもな」
痛いところを突かれた。昔からそうなのだが、どうも俺は“突っ走った方が早い”と考えるタイプの人間だ。周囲から再三注意されたのだが、ちっとも治りはしなかった。もっとも、俺に治す気も無かった訳だが。
「とりあえず、手堅く行こう。それでダメならまた考えるさ」
「また?」
せっかく来たんだ、二連チャンだろうが三連チャンだろうが悪くない。勿論、出来ればそうはなりたくないが。