0022-03 (0045)
「警邏がいいなぁ」
「理由は?」
「楽してお金かせげそう」
…ということで、都内の警邏を行うという依頼を受けた俺達は、宿をキャンセルして詰め所へと向かう事にした。因みに前述の“理由”を口にしたのは勿論チャクなのだが、全員が全員似た様な感想を持っていたので、誰も何も云わなかった。不謹慎であるのは百も承知だ。
警邏の時間は深夜から早朝に掛けて。荷物だけ置いて詰め所を出た。夕飯の為だ。
「そういえば」食事を終えてコーヒー(さすがに仕事前にアルコールを摂る趣味はない)を飲みながら、ふと思いついた事を口にしてみた。「お前の卵、一体いつになったら孵るんだろうな」
「ん~そうなんだよねぇ。ぼくとしては早くふかふわ~なのに出会いたいんだけど」
ねぇハクヒ、と、チャクは足下で青菜を頬張っていたウサギに話しかけた。
今現在、俺達のパーティで卵を持っているのは二人、チャクとセンリだ。センリの方は雅が居る関係上、出来れば動物に生まれて欲しくないという事でチャクとは対照的だ。勿論、その中身がアイテムな事もあるのだが、それは外側からはちっとも判らない。ちなみに、物理的に割るという事がどうやらこの卵は不可能らしい。とすると、やはり卵が開く(亜獣と限らない以上、孵るよりこちらのがいいだろう)のには、何らかの形でイーサが関係しているのかも知れない。例えば、持ち主の思考や何かに因る様な。動物が欲しけりゃ動物とか、アイテムが欲しけりゃアイテムとか。
とはいえ。
「…だとしたらどれだけ有難かったか」
「…? どうかされました?」
「いや。独り言」
浮かべた例は、見事に俺自身が破っているので(今でもアイテムの方が良かったと思っている)、全く信憑性のカケラもないのは明白だった。
「そういえばその卵、結構なレアアイテム扱いらしいな」
「え。そうなの?」
「市場でやたら高価取引されてるだろ。いっそのこと、お前それ売りに出した方がいいんじゃないか。そうしたら懐事情が一気に解決だ」
ええ~。ん~。でも、いや~、アレは~、んでも、違うよ~。訳の判らない声を上げながらやたら逡巡していたようだが、結局孵るのを待つ事にしたらしい。まったく気の長い事だ。