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0007-01 (0014)

 オークションというものをやってみた。
 冒険者組合(単純に云うと、ギルドを統括する様な組織だ)の主催しているもので、不要品の整頓であったり、戦利品を手っ取り早く金に換える手段としてであったり、様々な種類の物品が出品されている。
 冒険者登録証さえ提示すれば、どんな商品にも入札が可能だ。誰がどの商品に幾らで入札しているのかは逐次更新され、目当ての品を得る為に何度でも入札が可能となっている。入札は商品1つ毎にカツンと小槌を叩くようなものではなく、長時間かけて行う入札方式だった。入札対象商品達には、入れ替わり立ち替わり値が付けられて行く。確かに、常にその場に居なければならない様なリアルタイムの入札方式では、いつ何時何があるか解ったものじゃない冒険者相手には有用ではないだろう。
 テュパンの場合、入札棟はホーヴローヴェ大通り(南海沿いに走る、主要道路のひとつ)と市場通りの交差する地点に、海を向いて立っている。市場通りは昨日見て回ったところだが、ホーヴローヴェ通りには、終端に冒険者ギルド(正式には斡旋公社と呼ばれている)がある為、中間点たるこのポイントには、常に大勢の人間がひしめき合っている。今や遅しと、品物を競り落とす瞬間を待ちかまえている者が大半だろう。
 入るとまず目に付くのは、直近落札者一覧。基本的に、自身が逗留している場所は各冒険者ギルド或いは組合に連絡を入れるという暗黙の了解がある為(それは主に生死の判断に用いられるのだが)、品物はそのルートから落札者に届けられる事が多い。それでもやはり、自分で待ち構えて受け取りたい、とやってくる人間が多いのだろう。入り口でそれを見てから、受け渡しカウンターへ向かう者は少なくなかった。
 入札の場合は、競りたい商品によって受付が異なる。例えば一般的な武器防具であったり、珍しい装飾品、或いは愛玩動物ペットとしての魔獣や回復薬などの消耗品まで、そのジャンルの多さには全く恐れ入る。
 まず、自分の欲しい種別のカウンターに行き、そこで一覧を受け取る。出品者の名と同時に、通番、アイテム等の名称、使用・未使用の有無などの情報がずらりと並んだそれ(全く日に何度新しくなるのだろうと思ったが、終了したものに対しては一覧上に取消線を引き、ある程度は再利用している様だった)を元に、受付にて希望の品を伝える。すると現在の入札額が判るので、それを元に上回る金額を申告する。ちなみに一口幾らであるとかいう事は全くなく、通貨の最小単位たる1リーミルから、増分も1リーミル単位で可能である。
 なかなかまどろっこしい手続きではあると思うが、しかし扱う商品の量が量である以上致し方ないと思う。何せ武器防具などは各種常時1000を越える様な出品ペースであるのだから。

 目当ての品に対して取り敢えず入札をしてから、その入札終了時間を覚えつつ入札棟を出る。今度は闘技場に向かってみた。
 闘技場という名からは勝敗賭博(トトカルチョ)が想像されるであろうが、ここでいう闘技場とは(これもまた)組合が発足した、つまり組み手大会の様なものだった。
 自身の力量(この場合クラスの上位下位はまったく関係ない)、そしてパーティの人数に合わせて決められたランクに対して、勝ち抜き戦を行うというもの。俺も2度程参戦して、4・5位辺りに一度は食い込んだ。その後どうなったかは知らない。狙っていた商品の入札時間が近づいていたからだ。商店を軽く覗きながら、入札棟へと向かった。
 結果、手裏剣を手に入れた。手裏剣と言うよりは苦無に近い形状のものだ。飛び道具としても、接近戦での武器としても使える。少なくとも今持っているダガーよりは、格段に使い勝手が良さそうだ。丁度いいと、街を出てすぐ辺りに出てくる亜獣ディオーズ相手に、模擬戦の様な事をしてみた。いやまぁ、向こうにしてみれば模擬もなんでもなく、俺はただの食料だろうが。
 一息着いた頃には昼を回っていたので、出店で適当に昼飯を購入してから宿に戻った。そろそろチャクが到着していてもおかしくない。

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